ねえ、りんごちょうだい?

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 僕たちはただ見つめ合っていた。僕の顔を見ていた彼女がゆっくりと口を開く。 「あなたのことを教えてください」 「僕のこと?」 「はい。私はあなたの名前も知りませんから」  そういえば、あれだけ一緒にいたのに僕たちはお互いの名前すら伝えていなかった。 「……懐斗」 「懐斗、くん」  彼女の、僕の手を握る力が強くなる。  君は、と聞こうとした。でも、彼女に遮られた。 「最後に、名前を聞けてよかったです」  え。 「最後って、どういうこと?」  心臓がバクバク鳴っている。次の言葉は聞きたくなかった。けれど、彼女の口は止まってくれない。 「私、もうすぐ廃棄されるんです」  何を言われたのか、わからなかった。
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