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十年後。
「よし、完了!」
最後の仕上げをする。ここまで本当に時間がかかったな。
これで、やっと……。
僕はスイッチを入れる。
「……」
彼女の目が開く。
「久しぶり。って、毎日会ってるけどね。気分はどう?」
彼女が目をパチパチさせる。
「……懐斗、くん」
彼女が首をあっちに振ったりこっちに振ったり。最終的に目が僕をとらえた。
「私、動けるようになったのですね……」
「そうだよ。ずっと待ってたよ……」
「本当に、動けるようにしてくれたのですね……」
「うん」
だって、またこうして喋りたかったんだ。
彼女の手を取る。
彼女も握り返してくれる。
強く強く。
「君の目が覚めたら言おうと思ってたんだ」
「何をですか?」
きっと全部これから始まったんだ。そしてまた、ここから始まる。
「ねえ、りんごちょうだい?」
「……一つ百円ですよ」
「今日くらい、タダにしてよ」
段ボールのリンゴを一つ手にとってかぶりつく。
甘酸っぱい恋の味がした。
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