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僕たちが店に着くと、そのAIロボットの店員さんは無表情で言った。
「いらっしゃいませ。美味しいりんごです。いかがですか?」
下を見ると、リンゴが丁寧に箱に敷き詰められていた。どれも赤々としていて美味しそうだ。
「あ、じゃあ、二つください」
「かしこまりました。二百円です」
僕は店員さんに二百円渡す。店員さんは両手で丁寧に受け取ると、レジの中にしまう。
袋とトングを取り出し、二個リンゴを袋の中に入れてくれる。手際がよい。新は旧式の旧式だと言っていたけれど、そんなに悪いものでもないと思う。
「はい、どうぞ」
店員さんは僕に袋を渡すと、表情も変えずに頭を下げた。
「ちぇっ、やっぱ旧式だな」
少し離れたところに行くと、新が口を尖らせて言う。
「え、何で? 丁寧にしてくれたじゃない」
「そりゃ動作はそうかもしれねえけどさ……」
新にリンゴを渡す。渋々といった表情で受け取る新。
「あいつ全っ然笑ってなかったろ?」
「え、ああ。でもAIなんてそんなものじゃないの?」
言いながら僕は、少し胸に、ざわつきを覚える。
「お前……、今の時代AIだって表情の一つや二つ作れるんだぞ。声だって抑揚つけられるし。それが、何だあれ。だから旧式は嫌なんだ」
新はぶつくさ文句を言いながらガブリとリンゴに食らいつく。今のうちに腹を殴ってやろうかな、と僕は思った。
「……うまいな」
「え、ほんと?」
僕も一口かぶりつく。
「……ほんとだ、美味しいね」
「……まあ、これはこれだ」
そう言いながらも美味しそうにリンゴを食べる新を見て、先ほどまで感じていた怒りはすーっとどこかに消えてしまった。
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