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悲しい顔。この店員さんは感情を認識することはできると言っていた。僕は悲しいのか?
「どうしてですか?」
「どうしてって……」
僕にもよくわからない。ただ、ずっと一人でいる君を見ていると、何故だか声をかけたくなった。
「私の発言で何か不快に感じたことがおありでしたら、謝罪します。申し訳ありません」
店員さんは表情も抑揚も変えずに、ただ頭を下げた。僕は少し胸がチクッとする。
「いや、店員さんのせいじゃ……」
「では、何故そんなに悲しい顔をするのですか?」
何だかこっちがおされている、ような気がする。機械だから感情や表情の認識はできても、心中を察するということには至らないらしい。
「えっと、傷ついたとか、そういうわけじゃなくて。ただ……」
「ただ、何ですか?」
ただ、何だ?
何を言おうとしてるんだ、僕は。
「君が、笑わない、から……」
店員さんは、目をパチパチとさせる。しばし沈黙が流れたが、やがて店員さんは口を開くとこう言った。
「私は機械ですから」
その一言に。
涙が流れた。
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