ねえ、りんごちょうだい?

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『わー、おいしそー』  これは、子供の頃の僕? 『ねえこれちょうだい?』 『一つ百円です』 『えー、おかねとるの?』 『ほらここに、百円と書いてあります』  ロボットの女の人だろう。ピンクのエプロンを着ている。その人はリンゴの入った箱の文字を指さした。 『ぼくよめないもん。こどもだし。まだがっこういってないし』  そう。僕はまだ小さくて、漢字が読めなかった。 『そうなのですか? 子供でも字が読める子供もいますよ』  中にはそういう子もいただろうけど。 『ぼくはよめないんだよー』  その人はぐずる僕をじっと見つめていた。表情も変えずに。 『ですがどんなお客様でも百円と交換と言われているので』 『ちぇー。じゃ、いいや』  僕は何となくその人の隣に座った。 『どうしてここに座るのですか?』 『おねえちゃんひとりでしょ? はなしあいてになってあげようとおもってさ』 『私は商売中ですから、話し相手は特に必要ないのですが』 『もう、ぼくがはなしたいとおもってるからいいの! ここにいたらダメなの?』  僕はその人を(にら)んだ。その人は黙って。 『いたらダメとは言われてませんから。いいですよ』
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