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僕は認めなかった。認めたくなかった。だから、僕は。
『ねえ、ほらみて!』
『何ですか?』
僕が描いたその人の似顔絵を彼女に見せた。
『これは、私ですか?』
『うん、そう!』
『ありがとうございます』
相変わらず無機質な声だった。顔も変えずに。ただそう言った。
違う。
僕は別にお礼なんかいらなかった。
ただ、この人に笑ってほしかった。決して笑わないこの人に。
『ねえ、ほらこれ!』
ケチャップでオムライスにその人の顔を描いた。お母さんが少し手伝ってくれたけど。
『私の顔ですね』
『うん、ほんとうはオムライスもってきたかったんだけど、おかあさんがダメだって』
『私は機械ですから、オムライスは食べられません』
『……』
僕は、それでも諦めたくなかった。
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