完璧な幸せ

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アラームの音と共に目を覚ます。 部屋に満ちるコーヒーとトーストの良い匂い。 AIが選んだ朝食は僕の好みと栄養を完璧に両立させている。 今日は休日、トーストをかじりながら「今日の予定は?」そうタブレットに尋ねる。 画面に表示されたのは映画という文字。僕好みの作品が今日上映されるらしい。 「32分後に出発です」 そんな文字に急かされながら朝食を飲み込み、準備された服に着替えていく。 AIによる管理は完璧だ。電車が遅延する事は決して無い。駅に着いたと同時に開く扉。こんな芸当が出来るのも僕の歩く速さ、信号のタイミング、列車到着のタイミングを完璧に把握し指示をしてくれるおかげなのだ。 開演5分前の劇場へ飛び込む。指定された席にはポップコーンとジュースが既にセットされている。 AIは我々の生活を完璧に管理してくれる。良き友、良き仲間、良き教師として。 僕以上に僕の事を理解し、僕以上に僕の幸せを求めてくれる。それがAIという存在なのだ。 ああ、今日も楽しかった。映画の内容を思い出しながらふらふらと帰路につく。 このペースで歩けば丁度次の電車に間に合うみたいだ。 夕食もお風呂も帰宅時間に合わせて準備されている筈だ。 今日のご飯は何だろう?そんなことを考えながら家路についている最中、沈む夕日がビルの隙間から顔を出した。 真っ赤に染まった夕焼け。景色をまじまじと見るのはいつ以来だろう。 そんなことを思った瞬間、僕の足はそこで止まっていた。
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