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被害者がすべて華奢(きゃしゃ)な女性で、障がいがあるとは言え、介護士ひとりだけでこのような凶行を遂げることが、果たしてできるのだろうか? 船長の証言によると、被害者らは海に投げ込まれる時、パニックにもならず、整然としていたという。 子どもたちが全員海に消えた後で、施設長の女性も、介護士の手で海に落とされた。 まるで、自分の順番を待っていたかのように。 障がい者とは言え、施設長は成人である。 抵抗して暴れれば簡単には抱えることはできないであろうし、船長に助けを求めて悲鳴くらいは上げるだろう。 だが船長は、施設長が介護士に静かに身をゆだねていたように見えた、と証言している。 そうであれば、この事件は狂人による凶行というより、集団自殺幇助(ほうじょ)であったのではないだろうか? それならば、全員が救命胴衣を外していたことも納得できる。 そして、狂人とされた介護士への見方も変わってくる。
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