Ep,00 Prologue

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 結局借りたのはあの子がおすすめだと言ってた " ピーターパン " と " ハーメルンの笛吹き " と " 不思議の国のアリス " の三つである。本を机に並べて、それらの表紙をじっと見つめた。  少し古く、破れても仕方がないが気をつけてくれと司書さんに言われたのが記憶に残っているが正直これで破れてしまっても仕方がないと思う。因みにだが夕食はカップラーメンだ。作るのが面倒くさいけどこれなら楽だし美味しいし、お手軽だし安い。  ラーメンが出来上がるのを待ちながら不思議の国のアリスを手に取ってその表紙に触れた。  表紙はボロボロではあるが、それを開き数ページ開けてみれば特に中は古いとかそう言うのはないので普通に読める。文字が少し小さく感じるのは普段こう言うのを読まないからだと思いつつ、文章の羅列を視線で撫でていれば、車が駐車する音が聞こえてきた。  時計を見ればまだ七時半を少し過ぎた頃だが、今日は随分と帰りが早いみたいでなによりだ。少し寂しくも感じていたからちょうどよかった。なんて思っていれば玄関の鍵が空いて扉が開く音とともに妹の少し疲れた「ただいまぁ〜」という声が聞こえてきた。 「あんちゃんただいまぁ〜。え? なんで古い本読んでんの?」 「おかえり。学校の課題だよ。読書感想文的なアレ」  机に置いてあった本を見て聞いてきた妹に答えた言葉を聞いて「えぇ?」と怪訝げな表情を浮かべてられた。まだ何かをいうつもりか、と思っていれば妹はそのまま冷蔵庫へと向かっていった。  後から帰ってきた母や兄にも挨拶をしてから本のことを突っ込まれたが宿題といえば別に何も突っ込んでは来なかった。て言うか、絵本にするつもりだったのにガッツリと原作の方を借りてきてしまったことに今更ながらに気がついた杏里は自身に思わず呆れてため息を漏らしてしまった。 「お。ハーメルンの笛吹きか。杏里もそういうのに興味があるのか?」  上から降り注いできた声に顔を挙げればメガネを掛け直す父がいて本を手に取って興味深そうに表紙を見つめ、そのまま視線を杏里に落とした。 「興味があるわけじゃ……図書館であった年下の子に面白いよって言われて……」
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