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そんな事を言うその子に、どうしてかどこか聞き覚えのあるフレーズが聞こえて来たがどこでだったか思い出せない。
「ウェンディ役は難しいんだよ。
僕と一緒にネバーエンドランドを見て回って帰るだけの役回りだから。
絵本と一緒なら危険があればいいとは思うけどルール上、ただ見て帰るだけのまぁ所謂観光人みたいな感じだからさ。
大人になりそうな子ども、もしくは大人に近い存在ってのが条件なんだけど君ならぴったりかなぁと思って」
他の役は結構いるんだけどね。なんて言って笑うその子は男の手を自分の頭に乗せるとそのままセルフなでなでを始めた。なんだそれ。
だが、男も男で嫌がる様子はない。いや待て待て待て。
「大人がいるって、その人も大人じゃん!?」
「ティンク? ティンクはいいの。ピーター・パンの保護者なんだから」
「そう言うことじゃ、ていうかそとそもティンカー・ベルは妖精で小さくて可愛い女の子でしょ!」
「? 可愛いでしょ?性別違うけど。そんなこと言ったら僕だって女の子だよぉ〜。
物語と違うけど、そーゆーのもいいでしょ、おねーちゃん?」
そう言って口元に弧を描くその子の言葉に目を見開いた。
「お、んなのこ……? え、だって………ぼくって、」
「僕は僕だもん。
それで、行くの? 行かないの?」
どうするの?
そう言う少女の隣の男はただこちらを黙視するだけで。
窓の外に見える満月が二人の背中を照らす。明るさのせいか、部屋が暗いからか2人の表情は見え難いはずなのに。
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