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怪しく笑みを浮かべているような気がした。
拒絶することだってできる。
受け入れることだって。もちろん。
「か、えって……これるんだよね?」
そう、恐る恐る問い掛ければ彼女は優しく微笑みを浮かべて一歩だけ、こちらに近づいた。
男は静かに背中を向け窓に手を掛けた。
「勿論。ウェンディが望めばちゃぁんとこの家に、君の家族がいるこの世界に帰ってこられるよ」
まるで年下の子どもに言い聞かせるような優しい声でそう囁き掛けてくる彼女の言葉に息を飲み込んだ。
「ホント? 嘘じゃないよね?」
声が震える。
けれども彼女はそんな事気にせずに楽しそうに微笑んで両手を広げた。
それは、まるで舞台に立つ演者のように華々しく、雄々しく。
「ピーター・パンはあくまでも正直に!
好奇心旺盛で規約とルールには絶対っていうのが僕という役だからね。
気に入ればまた来ればいい。その時には、"新しい役"を用意しておくからさ」
今晩は、観光と思ってよ。
そう言った彼女が差し伸べる手を、少女は取ってしまった。
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