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自分より小さな子に何を嘯くのだろうと疑惑を抱いてしまって、なんとなく居心地が悪いがまぁ謝罪を言ってやるつもりはない。そんなこと言ったら失礼なことを考えていたと知られて何をされるかわからないから。ティンクの野郎に。
「じゃあまず何処に行く?」
覗き込んでくるピーターの顔が日本人離れした愛らしすぎて、綺麗すぎて。思わず仰け反ってしまった。
今まであまり気にしていなかったが彼女は日本人とは違った顔立ちをしている。美少年とも美少女とも取れる綺麗な顔にスレンダーな身体。どんな服を着ても似合う彼女の顔面はある意味兵器だと思う。
「……何処にって、ここが夢の国なんじゃないの?」
「まぁ、ネバーエンドランドに変わりはないんだけど見にいくのは六つくらいかな……」
うーん、と唸りながら悩むように視線を下に落としてとりあえず離れてくれるピーターを見ていれば困ったように眉尻を下げて顔を上げた。
「国がね、色々あるんだけど……多いから大きい国ごとに取り敢えず六つに絞って入り口をここに作ったんだよ」
ほら、と言ってピーターが指を刺すのは太い木の幹にまるで備え付けられていたかのように存在するそれぞれの形になっている不思議な扉があって、思わず目をぱちくりとさせてしまう。
赤い王冠の形の扉
桃色の塔の形の扉
灰色のクッキーのような形の扉
黄色の船の形の扉
オレンジ色の靴の形をした扉。
そして黒色のお城の形をした扉。
それぞれの形をした扉を紹介してくれるピーターを見れば彼女は「どれを選ぶのかなぁ」なんて目を輝かせてこちらを見てくるのでなんだか居心地が悪い。なんとも言えない居心地の悪さを誤魔化すためにため息を漏らせば、ティンクがピーターの横にたった。ぬっと、影が降り注いでくるのが少し怖くて振り返ったら意地の悪い顔でこちらを見下ろしていた。
「どうしたの、ティンク」
「役の揃ってるワンダーランドの方がわかりやすくていいんじゃないか?」
「うーん……もっと可愛く!」
「………今なら、ワンダーランドが楽しそうだけど、どうかしら」
それが可愛いのか。ピーターの言いなりになっているティンクに少し可哀想なものを見るような眼差しを向ければ密かに睨みつけられてしまった。だって仕方がないじゃないか、可愛くないんだから。どう見ても、どう考えても。
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