『Welcome to Wonder ”END” land』

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 ワンダーランド、という言葉を聞いてピーターは少し考え込みながら赤い王冠の形をした扉をじっと見つめてから「うーん」と唸りながらまたこちらに目を向けてくる。  一体なにを考えているのだろう、と考えながら見つめ返せば笑顔を振りまかれてしまった。本当に何なんだろう。 「よし。じゃあ、ワンダーランドに行こうか。  ほら、お姉さんが好きって言ってた”不思議の国のアリス”の国」 「え」 「あれ、好きじゃなかったっけ?  まぁ大人じゃなくて子どものアリスだけど、つい半年前くらいに来た子だからお姉さんと話が合うかも。結構可愛い女の子だよ」  水色のワンピースドレスに白いエプロン着てるのか、その女の子は。なんてピーターの言葉にアニメーションや絵本でしか知らない金髪の美少女を想像してしまう。だが、それ以上に心配なのはあの女王だ。  自由気まま我が道をいく我が儘女王。気に入らないものを全て打ち首にしてしまう残酷な女王がいるのなら、真っ先に打ち首にされてしまう自信しかなくて思わず首に手が伸びてしまう。生唾を飲み込みながら小さく息を漏らしてピーターを見ればこちらの不安を読み取ったのか優しく微笑んでくれる。 「大丈夫だよ、ネバーエンドランドの住人は決して君に手出しできないから。  そう言う規則なんだ。君に手が出せるのはせいぜいフック船長なんだけど、いなくなっちゃってさ。だからつまんないんだよね〜、やることなくて暇だし」  なるほど暇だから遊びに来ていた時に私に出会ったというわけか、なんて勝手に納得しながらピーターを見れば彼は「だからね」と背を向けてきた。  綺麗な笑顔を浮かべるピーターに少し胸が高鳴ってしまう。可愛いって罪作りだな。 「ウェンディと、ネバーエンドランド巡りをしようと思ったわけ!」 「思いつきもいいとこね。選ばれた子は迷惑でしかないと思うんだけれども?」 「あはは、でもきてくれたでしょ?」  嬉しそうに笑ってまた腕に抱きついて上目遣いでこちらを見てくるこの可愛い顔になんとも言えずに押し黙ってしまうとティンクによってピーターが抱き上げられてしまった。まるで嫉妬しているかのような見るに堪えない煮え滾った怒りと独占欲を溶かしたような悍ましい目色をしてこちらを見下ろすティンクに、背筋が凍りつくような感覚を覚えてしまった。
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