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ピーターはそれに気が付いているのかいないのかわからないが、そうされることは至って日常的なことなのか気にも止めずに楽しそうな笑顔を浮かべながらこちらを見つめてくる。朝に登った満月のような不気味に輝くその瞳を細めながら。
「お姉さんはどうしたい?
物語の通りに、僕が勝手に連れ歩いてもいいのかな」
「そ、れは……」
物語通りって、どんな話だっけ。
三兄弟がネバーランドに言ってインディアンと出会って、海賊に捕まってピーターパンが助けてくれて、そしてそのまま元の世界に戻るって当たり障りのない内容ぐらいしかわからない。だから、物語通りにって言われても困るんだけれども、なんて思いながら彼を見ればそれでもニコニコと笑っている。
勝手に連れ回されるのは嫌だから、ここは主導権をちゃんと握っておきたい。が、どの扉を通ってもわからないことだらけだし、正直な話、不思議の国のアリスの国って言うのは気になる。だったらもうそこでいいや、と適当になってしまうのは仕方がないのだろうけれども。
「まぁ別に君の行きたい場所に連れて行ってあげるよ。そう言うルールだからね。
僕が勝手に連れ回したらそれは規約違反になって僕が罰せられちゃうもん。そんなのやだからね!」
「……規約って?」
ぽこぽこと怒ってくるピーターがあざとかわいい。だが、まぁ気になるところはちゃんと質問していこうと漏れ出た言葉に、彼女は一瞬動きを止めてからティンクの顔に視線を向けて彼が見る前に視線を空に落とした。
「この世界で生きるためのちょっとしたルールだよ。
七個しかない簡単なルールだけど、まぁ終わったら帰るウェンディには基本的には適応されないから」
「私には?」
「そ。だってウェンディはこの世界で暮らすわけじゃないから。だから特別なんだよ」
そう言って肩を竦めたピーターに首を傾げてしまう。
「なんでウェンディは特別なの?」
純粋な疑問だ。
そんな疑問を投げ付けたところで何かあるわけでもないが、まぁ質問しないよりかはした方がいいだろうなんて軽い気持ちで投げかけた。
顔を上げてピーターの顔を見て思わず肩を震わせた。
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