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まぁこの二人にそれが届くわけも意味がわかるわけでもなく視線を落としてから周りを見渡した。さて、どの扉の先に行くべきなのか悩む。
「選出って言っても、適当でしょ?私ぐらいの年齢ならいくらでもいるし」
「いないんだよ〜、それが。
丁度良い大人と子どもの間って。大人になりきれず、子どもでいられないのって。微妙なラインなんだよねぇ」
ピーターが横にくっついて同じように扉を見てくる。
どんな扉か、見るために近づけば彼女も一緒についてくる。まるで雛鳥じゃないかなんて思うが別にそんな可愛らしいものではない。
「ところで、扉が気になってるの?」
「え。見ての通りだけど」
「あはは、説明してあげようか?」
最初から詳しく説明してくれてたらこんな無駄な時間必要なかったんだけどなぁと思いながら横目でチラリと見たら視界の端ででかいのが動いた。頼むから動くな唐変木め。
ジロリ、とティンクの方を見ればその鋭い瞳で睨みつけられた。本当に怖い、か弱い女の子にとってはあぁ言うのは恐怖対象でしかないから本当にどうにかして欲しくてピーターを見た。まぁ可愛く微笑まれるだけで終わったが。
「じゃあ説明するね」
違う。そうだけど違うんだ、という気持ちは誰にも届かない。
まぁ届いたら届いたで怖いのだが。
そんなことを考えているとピーターはまず赤い冠の扉を触って軽くノックした。
「まずはこの赤い冠の扉だけど、さっき言った通り不思議の国のアリスのワンダーランドのね」
「一番落ち着いてるんだっけ?」
そういえばティンクが言ってたな、と思いながらいえばピーターは「違うよ」とだけ言って黄色い船の形の扉の前に立ってこちらを見た。
「わかりやすくて楽しいの。それからこの黄色い船の形をしてるこの扉は、人魚姫のアトランティスね。海の中だけど息は出来るんだ」
「海の中にあるの?」
「そう。めっちゃくちゃ綺麗なんだよね、王子様役が見つからないからいないんだけど、結構楽しいよ」
それじゃあ物語が進まないんじゃないのでは?
まぁそれを言ったらウェンディにも弟二人がいないとストーリーが進まないから全員がいなければいけないっていうルールはきっとないんだろう。そう思っているとピーターは桃色の塔の形をした扉をペ池、と叩いた。
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