『Welcome to Wonder ”END” land』

8/30

26人が本棚に入れています
本棚に追加
/87ページ
「言っとくが、最初に行くならワンダーランドがおすすめだぞ。スウィーツは……刺激が」  ティンクが助言と言わんばかりに言ってくれる言葉に思わず振り返った。  刺激が、なんだ?どういう刺激だ? と思いながらじっと彼をみれば自分の鼻を指差した。あぁ、甘いのが苦手なんだろうな、と勝手な想像する。甘い香りの刺激が多分彼には耐えられないのだろう、可哀想に。  まぁ、私は優しいから仕方がない。と言った様子で肩をすくめて赤い冠の扉の前へと立てばピーターは嬉しそうな笑顔を浮かべて駆け寄ってきた。 「ワンダーランドにするの?」 「おすすめって言ってくれてるし、私優しいから。  でも次はヘンゼルとグレーテルのところに行くわ!」  お菓子の家は正直夢にまで見たものだから実物を見てみたいっていうのが本音である。  満面の笑顔を浮かべるピーターは扉のノブに手をかけた。 「さぁ、ウェンディ!」  声を上げてまるで歌うように喋り出して彼女に少しびっくりする。 「此処からは頭の狂った奴らの国だ。  動物も、植物も。道も空も太陽も! 何もかもに生命があって何もかもが喋って生きるそんな国。  君はこれからこの世界を見てもらう。約束はたった一つ。”ピーター・パンのそばを離れない”! これだけ。必ず守って、必ず僕のそばにいると約束してね?」 「……えぇ、必ず守るわ。その約束」  そう返事を漏らせば、彼女は満足そうにこちらを見てからノブを捻った。
/87ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加