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息苦しいそんな感覚を覚えつつもピーターがタイル張りの道を歩いていくのを眺めながらそのあとを追いかける。その後ろからゆったりとした足取りてティンクもついてくる。それが恐怖なのだとなぜわからないのかこの男は。
「あと、もう謎が多いところは全部、此処がワンダーランドだからってので済まさないと論理的な思考じゃ理解できないからね。僕だって未だにこの世界が理解できないもん
タイルに直接、木や草が生えてんのかわかんないしそれ以上になんで動物や植物が同じように喋ってるのか理解出来ねぇもん。僕の暮らしてる扉の向こうでもそういうのいないしね。此処が特異的なんだよ、他と比べても。だから頭可笑しいんだよ、ここで暮らす人間は」
じゃなきゃやってけないだろ、と小馬鹿にしたように笑うピーターの言葉に思わずティンクを見た。助けを求めたわけじゃなくて、お前らも同じだろ。頭可笑しいじゃん、という視線であるが彼は特に気にした様子も気がつく様子もなく冷たい声で「こっちみんな」と言って苛立たしい表情を見せる。
察せない男はモテないんだぞと言ってやりたいがそんなことを言っても彼にはきっと届かないんだろうな。つか届く気がしない。だってこの男はピーター至上主義者だから。なんて思いながらため息を漏らせばピーターが不思議そうに首を傾げた。
「どうかした?」
「………いや、別に」
彼女に言ったところで何かが変わるわけでもないし、もっと詳しい説明をしてくれるわけでもないのだから少し諦め気味にため息をもらす。
タイルの歩けばティンクの靴がぶつかる音だけが響く。後ろから聞こえてくるタイルを踏みつけるその音の威圧感が凄まじい。本当に、後ろに立たないでいただきたいと思ってしまうほどだ。否、後ろに立つな。マジで。
「会ってみたいやつとかいる? それとも物語の順番に行ってみる?」
「え、行けるの? アリスじゃないけど」
「道を辿るぐらいはね。多分アリスは今頃お茶会だろうし……気が合ってたらあのお茶会も五日間ぶっ続けでやるから」
理解出来なさそうに顔を歪めて肩を竦める彼女の言葉に思わず顔を顰めた。
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