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学校の授業の一環で、本を一冊読むというのがあった。
現代文の先生は、中学生なのにこんな土日を使って宿題を出すのが好きな変な大人だ。こどもっぽいというか。
まぁテスト中の問題になった作品を読んでどう思ったかなんて自由記述欄がいつもあるから結構点数が高めに取れるから楽と言えば楽なのだが。
何を書いても五点も加点されるのだから。
今回の宿題は、読む以外にも感想文を書くことも求められた。だからと言って小説なんて小難しいものを読むつもりはない。
先生は漫画以外なら絵本でも図鑑でも歴史書でもなんでもいいと言ったのだから。
だからこそ、杏里は本絵本作家だった父親の姿を思い浮かべて絵本を読むことに心を決めたのだった。
誰でも知っている童話。
アニメ映画にもなった『不思議の国のアリス』や『ピーター・パン』、『白雪姫』や、『シンデレラ』など。
簡単に読めて、誰もが知っている世界に親しまれている作品ならば適当な内容で感想文を書いたって誤魔化せる。
そんなことを考えながら杏里は静まり返った家に背を向けて玄関の扉を静かに閉めた。
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