『Welcome to Wonder ”END” land』

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「特別?」 「そ。僕がたまたまあっちの世界に行った時に僕を守ろうとして死にかけちゃってね。それはそれで申し訳ないから生きるか死ぬか選ばせたんだ。  生きたいって言ったから僕の魔法で助けてあげてそのままずっと不在だったティンカー・ベル役になってもらったんだ」  本当に偶然の出会いだったよ、と懐かしむように言う彼女に対してもう一度ティンクを見ればこちらの会話が気になるのか少しソワソワしている様子で思わず可愛く見えてしまった自分はもう末期である。可愛く見えたなんて気のせいだ、と自分自身に言い聞かせながらピーターの手を引いて再び歩き出す。 「この、ワンダーランドに大人の役は?」 「あー、帽子屋連中かな。帽子屋と三月うさぎと眠りネズミ。  後はハートの女王のジャックとか、トランプ兵達は大人だね。あ、本当なら王様も大人なんだけど今は不在なんだ」 「不在? なんで」 「まぁ色々あって。そこら辺は気にしなくていいよ。王様に丁度良いヤツもそろそろ見つかるだろうし」  てか見つかってほしい、とあっけらかんと笑うピーターに思わず首を傾げた。その言い方はまるでピーター以外にも役を見つける人がいるような口振りで、まさかそんな人がいるとは思わないけれども、でもまさか。なんて思いつつ彼女を見ればとても楽しそうだ。 「この世界って物語を基準に作られてるの?」 「この世界を基準に、物語が作られたんだよ」 「えっ」  まさかの事実に驚いて声を漏らしてしまう。 「役ってのはなかったんだ。  でも何かをきっかけにそう言うのが出来上がって、アリスは本当に実在した子だしね。あっちと繋げた穴は本当にあったんだよ。もう入り込めないように閉じたし向こうでももうコンクリートの下だし」 「え、ピーターパンとかは!? あれは、」 「あれも実際にあったらしいよ。僕は知らないけど、ピートって男の子が神様からもらった力であっちの世界にいって、実際はアリアっていう女の子とそのこの弟を一人連れてきたんだ。一週間くらいこっちで遊んだりして海賊ともあったりしてから返したら向こうでは大騒ぎだったらしいよ。ピートはその後あっちの世界の大人に保護されてそのままここには戻ってこなかったって。  何かの拍子で元々向こうにいた子どもがこっちに連れてこられて時間を経て物語の基盤になる日々を送ってなんかの拍子で向こうに戻っていって、それを出来た知り合いとか友人とか、新しい家族に話してるうちに尾ビレ背ビレがついてあぁ言う物語になったんだ。  それを面白がった神様が一度この世界に連れてきた住人を一掃してからここを新しく作り替えて今にしたってわけ」
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