『Welcome to Wonder ”END” land』

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 肩をすくめてそう説明してくれるピーターの言葉に、思わず開いた口が塞がらなかった。まさか、この世界で起こったことが自分の世界で物語になっていたなんて、思いもしなかったからで。呆然として口を開いていればピーターがケタケタと笑い出した。何がそんなに面白いのかわからないがピーターのその笑う姿に何か騙されているような気がしてきて思わず眉を顰めた。 「ピーター? なにか嘘ついてる?」 「あはは、ウェンディは純粋だなぁと思って。まぁいいや。さて、話を戻すんだけど、まずウェンディは誰に会いたいの?」 「誰なら会えるの、逆に」 「え、普通にアリスにも会えるし、狂ったお茶会メンバーにも会えるし、白うさぎ、チェシャ猫、ドードー鳥、トカゲのビルとか芋虫、公爵夫人とその赤ちゃんとか……フットマンにも会えるけど」 「途中から知らないのが出てきた……公爵夫人とか、フットマンって? トカゲのビルもちょっとわかんないかも」 「そうなの? 今の子は知らないのかぁ〜、今度不思議の国のアリスをちゃんと読んでみてね! だから映画は嫌いなんだ」  うんもう。と声を漏らすピーターは怒っている、というかどこか拗ねている様子でどうしてかそれが可愛くて頭を撫でれば「なんだよー」と唇を尖らせる。妹はいるのだが、弟がいたらこんな感じなのか、と思うと可愛くて可愛くて仕方がない。  そう思って頭を撫で続けていれば後ろから嫌な空気が漂ってくる。振り返ればティンクが無言でこちらを睨んでいた。ピーターに先ほど近づいてくるなと言われたばかりだからか、それを律儀に守ってしまうほどに彼女のことが大好きなあの大人に不気味さを感じるが少し優越感を抱いて鼻で笑ってやれば彼はカッと目を見開く。怖いからやめてほしいのだがまぁ近づいてこないからこちらの方が今は優位に立っていると思えば気は楽だ。 「森から外れたら豚見れるよ」 「ぶた?」  あ。と思い出したようにそう言うピーターの言葉に思わず首を傾げて問い掛ければ彼女はうん。と頷いて少し考えるようにため息を漏らした。 「まぁ役の人だから本物のブタではないけど、今頃家でも作ってるんじゃない?」 「三匹の!? いるの!?」 「ワンダーランドから外れちゃうからやめとこ」 「えぇ?」 「また次の機会があればね、会わせてあげるよ!」  そう言って森の方から視線を戻すピーターに思わず目を細めた。  期待を持たせてそう言うことを言うのならちゃんと期待通りに見せてくれたっていいのに、と思っても仕方のないこと。朝までに帰らないといけないんだからここは取り敢えずさっさと見てしまわないと。そう意気込んだところでピーターが「あ」と言って足を止めた。
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