『Welcome to Wonder ”END” land』

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 本当に色々と急なピーターに怯えを見せるも彼女は特に気にした様子もなくニコニコと笑って手を握ってくるものだから思わず何をされるのかと言う不信感と恐怖心に背中がぞわぞわと震える。 「あそこ。タイルがなくなってるでしょ?」  ピーターがそう言いながら指を差して顔を向けた方向に視線を送れば確かにタイルがなくなっていて普通の地面が見えていた。だからどうしたのだろうか、他の場所にはまだタイルがあるというのに、と思っていればピーターがそのまま手を引いて歩き出すものだから思わず息を呑み込んでその勢いのまま歩き出してしまった。  急な行動に思わずのけぞってしまったが、それでもすぐに追いついて彼女の隣を歩く形になりその顔を見てみればひどく楽しそうな顔をしている。 「ねぇどこに行くの?」 「あれ、マッドハッター、えっと……帽子屋達のところ。  本当だったら双子とかに会いに行くべきなんだろうけど、今あの双子は女王のところにいるからね。順番的には先にティーパーティーかなって」 「お茶会……」  そう言葉を漏らしたところで思い出されるのは先ほどピーターが声を上げて笑っていた過去のティンクの話で、思わずその惨状が脳裏にこびりついてしまって思わず心臓の辺りからスッと血の気が引いて行く感覚を覚えてしまった。  腹の奥底から、胃液が逆流するような吐き気を覚えてしまい足を止めればピーターが不思議そうにこちらの顔を覗き込むように下から見上げてくる、その綺麗な満月の瞳が、 「”杏里お姉さん”」  ふと呼ばれた名前に息を呑んだ。
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