『Welcome to Wonder ”END” land』

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 久々に、名前を呼ばれたような気がしてゆっくりと彼女の顔を見れば心配そうにこちらを見ている。 「大丈夫だよ。  別に、僕だってやりたくてやってるわけじゃないし。流石にお姉さんの前ではやらないから」 「……」 「どうする? 休憩する?」  やめる、という選択肢はない。  そう言う役目なのだろう、と理解はするが解りたくはなかった。どうしてか、無性にこの狂った場所から早く帰りたい気がして杏里は息と共に言葉を飲み込んで笑顔を貼り付けた。 「ううん、早く行こう」 「本当に大丈夫?」 「うん」  早く早くと足を動かすことだけを考えれば彼女は酷く満足げな表情を浮かべる。それがまた恨めしくて。此処に来ると決めたのは、最終的に自分だというのに、連れてきた彼女を怨めしく感じてしまうのはやはり人間の性というものだろう。相手を心配する気持ちを持っていたとしても、自分に関わりのないことだから特にこれと言って声を掛けない、本当にその程度のことだった。 「そういえば」 「え」  思い出したように声を漏らしたピーターが立ち止まったのは丁度タイルと地面の境目で、まるでそこが自分とピーターを隔てる壁のようなものがあるように錯覚してしまう。 「丁度四十年前かな、前のウェンディがいたのって」  本当に急に話題が変わる。  先ほどの雰囲気とは打って変わって最初の頃と変わらない掴みどころのわからない感覚に杏里は思わずため息を漏らしつつ呆れた顔を浮かべてしまった。 「なにそれ、めちゃくちゃ昔……ピーター、幾つなの?」 「さぁ?僕はピーター・パンだから永遠に子どもなのさ」  それが掟だしね。と鈴が転がるように笑う彼女はどちらかというとティンクにも思えて仕方がないが、それ以上に何故今そんな話をし始めたのか杏里はただただ首を傾げた。 「あぁ、前のお姉さんの話ね。  前は兄弟も連れてきたんだよ、双子の弟と、五つ下の弟。  年齢的にはそうならないけど、本来の物語と一緒じゃんと思って三人連れてったんだよねぇ」 「そうなんだ」  だからなんだ、と言いたげな面倒臭そうな表情を浮かべる杏里にピーターはカラカラと笑って話を続ける。
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