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草でも壁に見えて怖いものは怖いのだ。それを否定できると思うなよ、なんて思いつつも杏里はため息をこぼしてから周りに視線を向けてみる。
「他に入り口はないの?」
「ここだけだよ。他は違う場所の入り口だから、勝手に入ったら迷子になっちゃうからね。
ほら、僕が引っ張ってあげるからさっさと来てよ」
時間が勿体無いでしょ!と言って手を差し伸べてくれるピーターに少し不安を覚えながらもまぁ迷子になるくらいならとピーターの、少し自分よりも小さな手を取った。
そのままその手に引っ張られて草の壁の中へと吸い込まれるように入っていく、その迫り来る恐怖感に目を思い切りつむって足を動かせば数歩進んで足を止めてしまった。止めてしまった、というかピーターが止まったから止まらざるを得なかったというか。
ゆっくりと、開いた視界の先に広がった景色に目を見開いた。
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