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「そう? ならいいんだ、その辺りにあるものを適当を飲んだり食べたりしておくれ」
「まぁお前から貰うもんは大体ヤバいもんだけどね」
そのどこか不思議なジュースを飲みながら視線を逸らしながら言葉を漏らすピーターに帽子屋はジロリと彼女を睨んだ。
確かにピーターが飲んでいるジュースやあの黒い砂糖は怪しそうなものではあるのだが、それ以外は至って普通そうなものである。まぁ手をつけないのも、と思って目の前に置いてあったケーキに手を伸ばそうとすればピーターが睨みつけてくる。
彼女の睨みに思わず驚いてしまった。別に食べるつもりはないのだが、彼女がそういうふうに牽制してくるのであればと手を引っ込めれば向かい側の机に座っている三月うさぎと目があった。
虚な、光のない不気味な瞳がこちらをじっと見つめているのがただただ不気味で思わず視線を逸らしてしまった。何も考えていないような、だがそれでいてこちらを見透かすようなその目色に少し恐怖を覚える。
だが、視線を逸らした先にもただ目を細めただけの、貼り付けた不気味な表情を見せる帽子屋がこちらを見ているだけなのを見てしまった。それもまた不気味で視線を机に向けた。
背筋が凍りつく感覚が背中に走っているから手元にあった紅茶に手を伸ばした。
「のんじゃ、だめ」
そう言って驚いて声のする方に顔を向ければふわふわと揺れる天然パーマが揺れる髪が視界に入った。
可愛らしいピーターと同じくらいの男の子が眠たそうにあくびをしながら手に取ったコップを取り上げられたがそれ以上にその子の存在に驚いて動きが止まってしまった。
「お。ヤマネじゃん。おはよ〜」
そんな可愛らしい少年の登場に途端明るくなる彼女に思わず目をぱちくりとさせれば少年はピーターに顔を向けてあくびをしつつ微笑みを浮かべた。
「おはよぉピーター……このおねぇさんだぁれ?」
「ウェンディだよ。おっけ?」
「おぉ……、はじめてぇ。よろしくねぇ」
ぼく、眠りネズミだよぉ。と眠たそうに呟く彼によろしくと言えば隣の椅子に腰を下ろして取り上げられたコップの紅茶を飲んでしまう。
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