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まだ少し眠たいのか彼は少し目を擦りながらまた欠伸をして三月うさぎに目を向けた。
「あれ、どうしたの?」
「あぁ……放置でいいよ。いつものクスリ切れだから」
「じゃあ瓶の鍵開けてあげなよ。食べれないよ」
そう言って三月うさぎの持っている瓶を指差す彼につられてそちらを見れば確かに瓶の蓋にまるで顔のような模様のついた少し不気味な南京錠が掛けられているのが見えた。が、帽子屋もピーターも酷く面倒臭そうな表情を浮かべ2人で顔を見合わせてからピーターが怪訝げにヤマネを睨んだ。
「じゃあ君が開けなよ。僕は開けないからね」
「ぼくもやだよ。怪我したくない」
何を言い合いしているのかわからないが、そのついでにとピーターが机の上にケーキを置いた。それをみて持っていたティースプーンでケーキをすくって口の中に放り込めば柔らかな甘さとふわふわのスポンジの感触が口の中に広がった。
いちごだけではないフルーツがふんだんに使われた白いクリームで囲われたそのケーキは、本当に美味しくてすぐに次をすくって口に放り込んだ。
「私が開けるのか、それは賢明な判断だ。致し方がないが、鍵を持ってこよう。白兎が来たら時計を取り上げておくれよ」
「しろうさぎ?あいつ今ハートのよ王のところでしょ」
「後で来るんだよ、飴を取りにね」
だから頼んだよ、と言って立ち上がった帽子屋の言葉を聞きながら首を傾げるもピーターとヤマネは面倒臭そうに顔を歪めながら椅子に腰を下ろしてジュースや紅茶を飲み始める。一体なんだったのだろう、今の時間は。
理解が出来ないまま2人を見つめればヤマネと目が合ってその綺麗な、まるで蜂蜜を思わせるような柔らかい瞳は宝石みたいにキラキラと輝いていて思わず見惚れてしまうほどで呆然と眺めていれば彼は不思議そうに、でも笑みを浮かべて首を傾げた。
「どうしたの、ウェンディ」
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