『A Mad Tea – Party』

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 クスクスと笑っていればピーターが気になったのかプチシューの入った箱を持って隣の椅子に腰を下ろした。はい、と言ってプチシューを渡してくるので手を伸ばしてしまった。  だってケーキがとても美味しかったから。 「なんの話?」 「チェシャと他の皆って仲が悪い奴が多いよねって話」 「あぁ。確かにね。まぁ、猫だし」  仕方がないやり返す派。と言いながら不思議な色のジュースをのんだピーターに思わず彼女は首を傾げた。猫ってそう言うものなのだろうか、なんて思いつつそう言えばピーターが最初の方にくれたオレンジジュースに目を向けた。  ガラスコップを手に取って一口飲んでみた。口の中に広がるオレンジの爽やかだが甘く、さっぱりとした味と香りに思わず心が穏やかになる感覚を覚えた。 「おいし……」 「やっと飲んでくれた〜。美味しいでしょ?  因みにオレンジティーもおすすめ。ワンダーランドにはないけど、違うとこに行ったら飲ませてあげるよ」  そう言って嬉しそうに笑うピーターに思わず釣られて笑みをこぼしてしまった。オレンジジュースがこんなにも美味しいのだからきっとオレンジティーとやらも美味しいのだろうと期待を胸に秘めつつ先ほどの話題に戻る。 「なんでチェシャはそんなにみんなと仲が悪いの?」 「なんでって……さぁ? あいつは色々と腹立つ喋り方をするし、味方なのか敵なのかよくわからない行動をするからね」  そう言ったヤマネはどことなく嫌そうな表情を浮かべつつ宙に浮かんでいた皿を掴むとそれに乗っていたケーキを鷲掴みにして口に放り込んだ。口の周りにクリームと何やらジャムのような赤い液体をつけて幸せそうな表情を見せた。 「美味しいの?」 「ぼくはね。マッドハッターは美味しくないっていうよ」 「そうなの? ピーターは食べたことある?」 「チェブリームの実のジャムって僕、好きじゃないんだよね。  まぁ、そのケーキ自体は結構美味しいから好きか嫌いかで聞かれれば普通って感じかな」  そう言いながらピーターはヤマネの口周りについたジャムを拭うと舐めて、嫌そうに顔を歪めた。 「甘ったるすぎるんだよね。  だからワンダーランドの木の実は好きじゃないんだ」
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