26人が本棚に入れています
本棚に追加
「そんなこと言って。クランベリーのジャムは好きなくせに」
「当然じゃん。あれをソースにしてステーキとかターキーにかけて食べるの好き」
美味しいよねぇ〜、と幸せそうに微笑むピーターの言葉にヤマネはなんとも言えない表情を浮かべる。それを見るにヤマネはクランベリーというのが嫌いらしいが、まぁそんな果実を見たことのない彼女は不思議そうに首を傾げている。
「クランベリーって?」
「クランベリーはそっちにもあるんじゃないの?
ワンダーランドでは育たないけど、よく僕がここに持ち込むんだ。まぁ、慣れ親しんだりここで元々暮らしてる奴らはあっちの食べ物は好かないらしい」
「そうなんだ。チェブリームっていうのは?」
「うーん、甘くていい感じ。でもウェンディは食べちゃダメだよ」
これもある意味ルールだからね。と笑うピーターの言葉に思わず首を傾げてしまう。
なんで食べていいものを彼に決められなければならないのだろうか。本当に謎であるが、まぁ変なものを食べて腹を壊すよりかはきっとマシだろう。それに先ほど言ってた通り、こちらの人があっちの食べ物が好きになれないようにもしかしたら自分もこちらの食べ物が好きじゃないかもしれない。
おいしくもないもの食べる気はさらさらないからこそ、取り敢えずピーターの言葉に頷いておいた。
それを見て彼女は満足そうな笑みを浮かべてまたあの夜空のようなジュースを飲んだ。というよりも次は飲み干してしまった。
「ねぇ、ピーター。それ、どういう味……」
「ウェンディ、それは気にしちゃダメだよ。僕らは黙って紅茶さ」
言葉を遮ったのはヤマネで。
彼の言葉に思わず目をぱちくりさせヤマネが注いでくれた紅茶を見た。ピーターが何も言わないのを確認してから紅茶を飲めば砂糖が入っていないから甘くない。けど、フルーツの香りと独特な甘みがあってどこか心地良さがある。
「これ美味しい」
「フルーツティだよ。
ぶどうとマスカットを混ぜたね。ぼくが作ったんだ。美味しいでしょ」
僕も好きだよ。と言いながらも彼はクッキーを頬張っている。
最初のコメントを投稿しよう!