『A Mad Tea – Party』

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   本当に考えられない。その味を考えただけで胸焼けがしてくる感覚に杏里は思わず飲んでいたフルーツティを飲み干した。  自分が食べたわけではないのだが、フルーツティを飲んでも口の中は甘ったるい感覚が残っていて胸焼けからもう飲めなくなってしまっている自分に少し嫌気がさしてしまう。小さくため息をつけばヤマネが心配そうに顔を覗き込んできてくれた。 「大丈夫? 気分悪くなっちゃった?甘いものばかりだもんね」 「平気……」  ケーキにジャムを乗せるのが信じられないだけで、とは言わなかった。  喉まででかかったが飲み込めた自分が偉いと、心の中で褒めつつ杏里はもう一度息を吐いてから三月うさぎの方に目を向けた。  また不気味なぐらい目を見開いて笑ってる。  何が楽しいのか、三月うさぎは不気味げだが幸せそうにあめを頬張っていて、目が合うとどことなく粘着質な背筋がゾワゾワと震えるような笑みを浮かべられた。 「懐かれたら後が大変だからあんまりみない方がいいよ」 「え」 「そうですね……  三月うさぎは見境のない男なので、懐かれるとややこしいかと」 「そ、そうなんだ……」  二人の言葉に思わず首を傾げてつつも三月うさぎから視線を外した。 「まぁ、ピーターは三月うさぎに気に入られてるし懐かれてるからよく追いかけ回されることがあるんだけど」 「え。そうなの? ピーターが?」 「あぁ、彼はね。三月うさぎを連れてきた張本人だからね、最初から好かれていたのさ」 「最初は違う役の予定だったらしいけど、ヤバいくらい役にハマっちゃったから三月うさぎになったんだよねぇ」  面白いよね。というヤマネの言葉に帽子屋はなんとも言えなさげな表情を浮かべながらどことなく面倒臭そうな表情を浮かべてピーターに目を向けた。 「え、ていうか。今ピーターのこと彼って……ピーターは女の子でしょ?」 「ピーター・パン自身は少年だからね。あの子を女の子扱いするのなんて三月うさぎとティンクぐらいじゃない?」 「女の子扱いしてるんだ……いや、ティンクのあれはなんとなく理解できるけど……」 「ティンカー・ベルのあれは依存だろうね。  本来のティンカー・ベルもまぁ嫉妬深いが彼の方が酷いだろう。君は大丈夫だろうけど、ティンクの嫉妬には十分気をつけなさい」  そう言って微笑むこともせずにそう小さな、杏里には聞こえる程度の声の大きさでそういう彼の言葉に思わず彼女は首を傾げた。
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