『A Mad Tea – Party』

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 どうして彼はそんな小さな声で呟くのだろうか、なんて考えて上を見上げればピーターと目があってしまった。  冷たくて蔑むような心臓が凍りつくようなその冷ややかな視線に思わず肩を震わせたがその視線はこちらではなく帽子屋に向いており、彼もそれに気がついているのか視線をピーターには向けずに三月うさぎの方を見つめていた。 「ウェンディ〜、そんな頭の可笑しい奴らの言う事聞かなくていいからねぇ?」  こちらには目を向けずにそんなことをいうピーターはそう言って空になったグラスを放り投げた。  ゆっくりと落ちたグラスは地面に落ちると小気味良く割れる音が聞こえた。  思わず「あ、」と声を漏らしたがヤマネがあくびをしながら止めてきたので彼の方を見れば眠たげな表情のまま「放ってていいの」と言われてしまった。われたグラスをそのままにしててもいいのか、と思っていれば帽子屋が面倒臭そうに立ち上がった。 「かわいそうなグラスだ。もう二度と紅茶を注げないじゃぁないか。  まぁ、紅茶を注げずとも紅茶に注げば問題もないのだろう」 「ははは、本当に変なやつ。好きにすれば?」 「君の同意は求めていないのだよ、ピーター。  元より好きにさせてもらうつもりさ。だって、我々は君の愛しい”児童”ではないのだからね」  そう言って帽子屋は割れたグラスの方へと歩み寄ると徐にそれをつまみあげ、机にあったティーポットの中へと放り込んでしまった。また思わず声を上げてしまえば帽子屋は愉快そうにくすくすと笑うとポットを一度撫でて、そしてカップに注いだ。  そこからはまるで水のような透明な色をした、どこかほのかに甘く芳しい香りが辺りに充満し始めた。 「ガラスが、紅茶に?」 「く、ぁ〜……ぼく、もうねるよ……今日はたくさん喋ったし……  アリスも白うさぎも。来たってぼくには関係ないからもう家の中に入らせてもらうよ……」  嘘、と呆然としていれば我慢の限界と言わんばかりにヤマネは立ち上がり歩き出した。  こちらの返事も聞かずに家の中へと入っていくヤマネに帽子屋も手を振りながらその芳しく美味しそうな紅茶を飲んで幸せそうにしている。そんな彼らを眺めていれば徐にピーターが隣の席にふわりと降りてきた。
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