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「童話が好きなの?」
「僕? うーん、そうだな……好きだけど共感は出来ないかな? なんで帰しちゃったんだろうって。まぁ、ネバーランドのルールとして大人になりかけたウェンディを置いておくわけにもいかなかったんだろうけど」
仕方のない話だよ、とわざとらしく肩をすくめるその子のジェスチャーに、なるほどそう言う考え方もあるんだな、なんて思いながら本の表紙のタイトルを撫でようと手を伸ばしたが、彼はすぐにも次の本を重ねてくるのだから手を引っ込めてしまった。せっかちなのか、なんなのかわからない。
「ハーメルンはグリム童話、ピーター・パンはジェームズ・バリーが原作の物語だね。
世界には三大童話って言われてるのもあって、グリム童話はもちろん、イソップ物語やアンデルセン物語なんかもあるんだよ」
物知り。
そんな言葉がピッタリと言わんばかりの博識さに思わず本当に年が近いのか、それともそう見えるだけで実は年上だったりするのか、と思っていれば積み重ねられた本が視界に入った。
「それは知ってる。不思議の国のアリスでしょ? 映画にもなってたし」
「大人になったアリスの話ね。僕はあんまり好きじゃないなぁ……だから僕は童話原作の方をお勧めするよ」
「原作の方が面白いの?」
「それは読んだ人次第じゃない?」
僕は原作の方が好き。と無理強いしない提案に少し読んでみようかと思って本を手に取れば彼は途端嬉しそうな花が咲き綻んだような笑顔を浮かべる。こうしてみるとやはり年下にも見えるが、彼は外人なのだ幼く見えても幼くないかもしれない。
「アリスの面白いところは何?」
「やっぱ登場人物かな? 皆個性的で愉快痛快はちゃめちゃなキャラクター。
その中でもやっぱり僕のおすすめはハートの女王かなぁ? 自分の決めたルールには厳格に則り残酷にもルールに従い続ける自己中心的で我儘なその姿勢、いいよね!」
「でも、すぐに首を刎ねてばっかじゃそのうち住人がいなくなりそうだよね」
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