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ヤマネの目には、そんな風に映っているのかと思わず困惑してしまえばヤマネはフッと笑みをこぼした。何か言いたいのか、と思いながら思わず見つめてしまった。
「ぁ、えっと……」
「まぁそうだろうね。
君と同じようなところから来たっていうのに彼らも、僕らも君とは違った生き物みたいになっちゃったからね」
不思議なもんだよ、と言いながら頭に生えている耳に触れてため息を漏らす。そんなヤマネに視線を戻せば、彼の表情が暗くどこか悲しげに歪められた笑みを浮かべていた。
どうして彼がそんな顔をするのかわからずに困惑していればまたマシュマロを口に放り込んだ。美味しそうに先ほどまで食べていたのに、先ほどとは打って変わって苦々しい表情を浮かべてマシュマロをもう一つ摘んでその感触を楽しむように動かした。
「日本には、“ヨモツヘグイ”って言葉があるんだろう?それと一緒さ」
突然漏らされたヤマネの言葉に、マシュマロに向けていた視線をヤマネに向け直した。
じっとマシュマロを見つめてからまた口に放り込んで、紅茶で飲み込んだ。口の中がなくなったところでヤマネは杏里に手を伸ばしてその人差し指を彼女の口に押し付けた。
「だから君は決まったものは食べちゃいけない。帰れなくなるからね」
「それって、」
つまりは無闇矢鱈に勧められたものを口に入れてはいけないということで、もし食べたら本当の意味で帰れなくなって、恐怖に思っていたことが現実に。
そこまで考えたところで顔から血の気が引いていく感覚を覚えた。だが、そんな杏里を見て何故か満足そうな表情を浮かべるヤマネはいつの間にか手に持っていた茶缶を杏里の前に差し出した。
「まぁ、その心配はいらないよ。ピーターは規約は守るし。
これ茶葉が入ってるからあげ、」
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