『A Mad Tea – Party』

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「あぁ、それと。  フルーツティ、欲しいなら普通にお姉さんの家の近くにある珈琲ショップに行って買った方がいいよ。こっちのものを持って帰ると、向こうでは砂とか塵になっちゃうから」  サラリとそんな事を言ったピーターの言葉に杏里は目をパチクリとさせた。 「え、そうなの?勿体無い……」  折角美味しいのだから向こうでも飲めたらいいのになんて事を考えながら少し難しそうな顔をする杏里を見てピーターはクスクスとどこか楽しそうに笑った。  先ほどまでとは打って変わって、ティンクも普通の顔をしてピーターの隣に立つ。まぁ普通といえども厳つくて下から見るには少し怖い顔つきなのだが、そろそろソレに対しては慣れそうである。 「あはは。そういうルールだからね。  あ。でも飲んだからってお腹の中で砂とか塵になるわけじゃないから安心してね!」  どうしてそういう事を言うのか……と呆れた顔をしながらピーターを見るが彼女は至って楽しそうな様子で歩き出そうとする。  慌てて立ち上がって追いかければティンクと目が合った。彼はじっとこちらを見ると、どこか面倒臭そうな表情を見せながらも可哀想なモノを見るような眼差しを向けてくる。一体なんだと言うのだろうか。  言いたいことがあるのならばハッキリと言ってくれてもいいのだが、言うつもりは毛頭ないのかため息を漏らして彼はピーターの後ろを追いかける。本当になんだって言うのかと思いながら杏里も二人の後を追いかけた。 静まり返っていたはずのティーパーティだったが、杏里がウッドフェンスから出て、それを閉じると同時にまた音楽のようなものが鳴り響き、三月うさぎの楽しそうな声を荒げているのが背中に聞こえてきた。
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