26人が本棚に入れています
本棚に追加
またお茶会を始めたのか、と呆れたように振り返ろうとすれば目の前から「おい」と低い声が聞こえてきた。
「え、何?」
声をかけたティンクを見上げて聞いてみれば彼は呆れたように横の方に視線をやった。その視線を追いかけて横を見ればじっとこちらを見ている、まるで箒のような尻尾を持った犬のような狼のような、どこか不思議な生き物がこちらを見つめていた。
「え」
「……まぁ、簡単に言えば……ミチクサだな」
「みちくさ」
「振り返ったら最後、俺らと逸れて一生このパーティ会場の周りを迷い続ける羽目になるぞ。森を出るまではピーターの近くにいろ」
行け。と低く漏らされる言葉に慌ててピーターのいるところまで走った。
ピーターの近くにたどり着けば彼女はにっこりと微笑んでから手を差し伸べてくる。思わず握手のように手を握れば「違うよ」と言って手を繋がれた。
「あの犬はアニメ映画の真似して作ったんだ。あはは、でも好んで人間を迷わす最低のヤツになっちゃってね。
あぁいうのも、このワンダーランドには沢山いるからあんまり離れないようにしようね、おねーさん」
「う、うん……え、ていうかティンクは大丈夫なの?ピーターも」
「僕らは元々この世界の人間だし、というかアレは僕が作ったから僕とティンクには手出ししてこないよ。
僕とティンクに手を出せるのはフック船長とその手下だけってルールだしね!」
あっけらかんと笑うピーターの言葉を聞いて安心してもいいのかそれとも警戒を怠らない方が良いのか迷ってしまう。が、そんなこと迷うのも馬鹿らしくなるくらいに、彼女は楽しそうに鼻歌を歌いながら蔦のカーテンをくぐった。
最初のコメントを投稿しよう!