夕暮れの公園にて

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 まだ、薄暗いというには早い。けれど、昼間の光に満ちた景色とは違う。どこにも属さない中間の。グラデーションの名前を持つ色と色の間の。名前のない色のような曖昧な時間。小学生の自分でも遊んでいたら早く帰れと怒られるような時間なのに、自分より小さい少女が、ブランコに座っていた。  たぶん、保育園の大きい子のクラスか、小学校に上がったばかりくらいの子だ。どこにでも売っているような青いTシャツに紺のズボン。汚れた風はない。着ているものはごくごく普通の子供だった。  それでも、一瞬、どきり。として、足が止まった。その子が、俯いてしゃくりあげているのが分かったからだ。  以前見た心霊特集の番組で、深夜の公園で泣く女の子の話があったことを思い出す。たしか、あれはサラリーマンが酔っぱらって帰る途中でたまたま酔い覚ましに立ち寄った公園でブランコの音が、きい。と、聞こえて……。  きい。  そんな記憶を掘り起こしているのを知っているかのように、ブランコの軋む音がした。  おばけとか、都市伝説とか、クラスの女子はテレビで特集があるたびに、翌日になるときゃいきゃい。と、大騒ぎして話している。こわい。とか、言いながらよくやるよな。と、いつも思う。  怖いなら見なければいい。  怖いなら話さなければいい。  怖いなら近寄らなければいい。  怖いなら逃げればいい。  そんなふうに思いながらも、少しだけ。と、言い訳して自分も心霊特集は見るし、その後結局怖くなって、別の部屋で寝ている兄のベッドに潜り込むのだ。その時になって後悔するのに、それでも、また、反省も忘れて心霊特集を見る。  そんな自分のバカさ加減にその時もまた、同じ後悔を繰り返していた。  きい。  また、ブランコが軋む。  そちらが見られなくて、自分の足を見つめる。靴の先が泥で汚れているのが見える。落とさないで玄関に入ったらきっと、母はまた、怒るだろう。  どこかで、落とさないと。  必死にそんなことを考えて、ブランコの軋む音から耳を背ける。どくん。どくん。と、心臓の音が高まる。こめかみのあたりが脈打つようだ。    にいちゃん。たすけて。  家を飛び出す前、母と何かを言い争っていた兄に心の中で助けを求める。  母にも父にも別に虐待されていたわけでもない。自分に対する関心が薄いことにはうすうす気づいていたけれど、生活は何不自由なかったし、行事ごとにも殆ど顔を出してくれて、必要な時は話を聞いてくれた。それでも、助けを求める相手は父でも母でもなく歳の離れた兄だ。 「だれ?」
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