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2.先生たち、ロウル先生から
三人が席に着いてから、割とすぐのタイミングで入学式開始のチャイムが鳴った。ゴーンゴーンという、学校らしからぬ荘厳な低い音が鳴り響く。
講堂のステージ上の教壇、藍色のカーテン、蔦の葉とつるが描かれた紋章。
教壇に、つばの広い黒の帽子をかぶったひどく背の高い男が現れた。この男が、あのロウル・アーガット。
男は、帽子をゆっくりと脱ぐと双眼鏡を目にやって生徒全体を見渡す。そして、一つうなづくと
「皆さん、はじめまして。わたくしが、この学校の飛行術、戦闘部担当のロウル・アーガットです」
と、挨拶した。
「皆さんは、様々な経緯でこの学校に辿り着いたことでしょう。ある人は、夜道でなかば人さらいにでもあったかのように馬車に乗せられた。また、ある人は寝て起きたらこの学校の寮のベッドに。そして、またある人は、この学校の噂を聞きつけて興味本位で、血眼で入学願書を探し、やっとの思いで手に入れ申し込んだ。入学までの経緯は人によるでしょうが、わたくしども一同は、あなた方を一人残らず、この学校の生徒として、心より歓迎しております」
先生たちは、そろわないリズムでそれぞれ拍手をした。ロウル先生は、ちらりとそちらを一瞥し、つづけてこう言う。
「クラス分けを、しなければ、なりません。寮の部屋はクラス別ではないですが、受けるべき授業が皆さんそれぞれの能力や趣向、体質により異なります。しかし、その前に教員の紹介をしましょう」
「先ほど、申し上げた通り、わたくしは飛行術と戦闘部の顧問を担当しているロウル・アーガット。今期、1年生のAクラスの担任です。Aクラスに振り分けられた方々は、私の生徒ということになりますが、最初の試験で総合成績10位以内の者は、入部テスト無しで戦闘部への入部を許可します。というか、ほぼ必ず入部させます。以上です」
ロウル先生は、話し終えるとまたつばの広い黒の帽子をかぶって教員席に戻っていった。
教員席のエリさんが「戦闘部への入部は、強制ではありませんからね。よく、考えてから返事をするように」と釘を刺すように、震えた声を上げる。
ロウル先生は「そんな、おおげさですよ」と言って他の先生と笑った。
エリさんが、「まったく。次は誰なの?早く紹介してちょうだい」と他の先生を急かす。
あだら先生が席を立ち「では、僕から失礼します」と静かに言った。
生徒たちが、拍手で迎えるとなぜか講堂の天井には灰色の雲が表れ、ごろごろと雷の音が低く響いた。
【続く】
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