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4.新入生のためのテスト、適性検査
入学式の翌日、新入生は朝から筆記テストと適性検査を受けさせられることになっていた。
クラス分けは、この筆記テストと適性検査によって行われるのだろう。
クラス分けがされるまでは、新入生は全員大講堂でみんな一緒に同一の授業を受ける。
1日目の筆記テストは、国語の文章題みたいな問題が出てきた。とても難しいというわけではなかったが、魔女の世界らしい場面が問題文になったりしていた。
『惚れ薬を作るために、ガマガエルが1匹と薔薇の花弁が6枚必要になりました。ガマガエルが住んでいるのは、黒いほうの森の入り口にある湖ですが、あの森は真っ暗なので触っただけでは、それがガマガエルかどうか新入生のあなた達には、今はまだ識別しかねるでしょう。さて、どのようにガマガエルを手に入れますか?』
などという問題である。
シダは、「何匹か、ガマガエルらしい蛙を多めに持って帰る」
メイアは、「ガマガエルの特徴を先に、本で調べておく」
マユイは、「ガマガエルを黒の森で捕まえることは諦め、先生に相談する。専門の店がないか調べて、そこで入手する」
というような答えを書いた。
薔薇の花弁6枚の件についての問題には元々、知識がある者へのサービス問題ということなのか「惚れ薬に適した色の薔薇は何色か」という問題も出た。
とりあえず、よく分からなかった3人は赤とピンクと書いたが、シダは自信がなかったためカッコの中の余りの狭いスペースにまたは、白と書いた。
そんな筆記テストが一通り終わって、シダたちは頭が疲れてふらふらとしていた。
メイアは「何あのテスト、私たちがまともに答えられるわけないじゃん。点が悪かったら、どうなっちゃうんだろ」と不満をこぼしている。
「次は、適性検査だね。点がどうとかより筆記テストでも、どんな子か何に向いてるかを知りたいだけじゃないかな」とシダは、もう学校に慣れてさえいそうだ。
マユイは「今、思い出したらカラスの羽とコウモリの羽なんか全然違うし、あの絵は完全にコウモリだよね。緊張してて、わけわかんない答え書いたかも。またジオ先生に、やばい生徒だと思われる」と自分の解答を思い出して、後悔ばかりした。
「私も、トマトの果汁は何色って問題で透明って書いたかも。シダは、何かやばい解答書かなかった?」
「それ、果汁っていうよりゼリーみたいな部分?種子を守ってる部分のことだよね?私は、そうだな。魔法のハサミで切れないものは?って問題に、使ったことがないためわからないって書いたかな」
「それ、別に間違ってないよ」
「やっぱり皆、出されてる問題それぞれ違う部分もあるみたいだね。私、そんな問題なかったよ」
マユイが言うように、出されている問題は、少しずつそれぞれ異なるようだった。
適性検査の会場は屋上から、運動場。その範囲内で、順番に複数の検査が行われる。屋上につくと、エリさんが生徒を並ばせていた。
噂通り、ロウル先生が屋上の踊り場に生徒を5人程並ばせホイッスルの音とともに飛ばせている。
5人一斉に飛び降りたかと思うと、2人の子は青い羽が生えて浮かび上がってきた。ロウル先生は彼らに「おめでとう。お前らは、私が担任だ。よろしくな」と言って、笑いかけている。
2人は、生えたばかりの羽で何とか屋上に舞い降りたがまだ、足ががくがくいっている。
浮かび上がって来なかった子は、先生の魔法か何かで見えない糸に吊られるように、屋上に戻された。
エリさんが「怖かったでしょ。もう終わったわよ」と、かけよって肩をそれぞれさすったかと思うと「さぁ、次は運動場で他の先生たちの検査よ。いってらっしゃい」とすぐ背中を押して、急かした。
あだら先生のクラスの検査では、先生が作った風を起こす薬を手に擦りつけてどれだけ強い風が起こせるかの検査。
長机に試験管をいくつも並べて、あだら先生は石製のすり鉢で青っぽい実を必死にすりつぶしている。いくらか量ができたら、ビニール手袋をした手で摘まみ試験管に一つまみずつ落としていく。
すり潰した青い実を入れると、試験管の中のどろっとした赤い液体はグツグツと泡を吹きピンク色になった。
隣に、補佐の先生がいる。ひどく痩せていて頬が痩けている。茶色の髪を高い位置で括り、大きなゴーグルをかけている。
彼が冷めた試験管から生徒が並んでいる列に運んでいき、順番に生徒たちの差し出す手にスポイトで液体を3滴ずつ落とす係である。
シダは小さい竜巻を起こすことが出来たため、あだら先生に「いいじゃんか」と一言、誉められていた。
メイアは、意外にも特に何も起こらず砂がフワッと舞っただけで、本人も周囲も含め、少し拍子抜けだった。
マユイは、あだら先生が薬を少し付けすぎたのか台風が起きかけた。「後日、再計測しようかな」と言っていたが片付けのために、通りがかったロウル先生に「それじゃ、間に合いませんって」と一喝されて、マユイだけ2回目を受けた。
シダと同じような小さな竜巻が起きて「よしよし、良かった」とあだら先生はマユイの頭をぽんぽんと撫で次の検査に急ぐよう、急かしつつ見送った。
ジオ先生の特別コースの検査では、ハープの弦を指ではじいた時の振動数やエネルギーの強さで魔法の力を測られた。
メガネをかけたジオ先生が、大きな琴のような機械の横に座り、シートにペンでチェックを付けている。地味なテストで先生が指定した弦を人差し指で、はじくと背後にあるプロジェクターのような幕に数値やマークが記されるだけの検査だった。
先生は、「次、どうぞ」と「はい、おしまい。いってらっしゃい」だけを繰り返していた。暇そうというか、なんだかだるそうにも見えるがシダ達が来ると一瞬、ふふっと鼻で笑った。その場で、結果は教えてくれなかった。
ゾン先生という大柄の女性は、幻獣の保護や生育にまつわる学問の先生で飼育小屋で待っていた。色々な不思議な生物や黒猫がたくさんいて、生徒それぞれに特に懐きやすい生物がいるかや動物や自然が好きな生徒がいれば幻獣愛護部に勧誘された。
マユイも、勧誘されたが黒猫に噛まれて少し怖じ気づいていたために、保留ということになった。ゾン先生は「気になったら、また来てちょうだい」とチラシを渡した。
檻の中に入れられ変身の薬を飲んで何に変わるか見られたり、水の中で何秒息を止められるか測られたり。けっこうな体力のいる適性検査が次々と行われた。
変身薬の試験ではシダは、羽の生えた赤毛の猫。メイアは、黒い子虎。マユイは、小さなグリフォンに変わった。
マユイは、グリフォンに変わった自分の姿を見て最初は怯えていたが、ロウル先生は「初変身でグリフォンに変身するのは、見事ですね」と感心していた。
黒色の子虎になったメイアは、あだら先生の猫じゃらしで遊ばれていてどちらかというと猫みたいだったし、シダは羽が生えグリフォンになったマユイと一緒にそのあたりを気持ち良さそうに飛び回る。
エリさんがしきる、保健室兼休養所は満杯だった。メイアは、体力があり器用だからか自分の検査が終わるとエリさんに呼ばれて、手伝わされていた。
「毎年のことなのよ。みんな、すぐ元気になるわ」と言うが、無駄に広く見えていた保健室のベッドは新入生が入って満員になり、保健室がこんな事になるのは魔女学校だけだろうとシダは、思った。
そんな風にして、1日が終わった。
【続く】
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