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8.使い魔探しに森へⅡ
マユイとレイメルは水鳥の池につくが、水鳥はあまり人気がないのか先客はいなかった。
鴨のような小さな鳥や白鳥や鷺など、様々な鳥が浮かんでいる。ときどき、キラキラと輝く羽の生えた魚が水飛沫を上げて跳んだ。
「あのピンクの鳥、いなさそうだね」
「あの鳥は、たぶん夕暮れ頃に餌を探しにこの池に出没するって書いてあった気がする」
「そうだっけ。じゃあ、ピンクちゃんはやめておこうかしら」
レイメルは、少し不服そうだ。
「竜でも、探してみる?ジオ先生とおそろだよ」とマユイは、提案してみたがレイメルは「私が竜なんか使い魔にしたら、こっちが使われちゃいそう」などと言うので、マユイは困ってしまった。
「でも、蛙もヤモリも嫌なんでしょ?」
「やっぱり、ヤモリにしようかしら。ヤモリって、魔法で大きくすれば竜っぽくなりそうじゃない?」
「なるほどね」
レイメルの意外なグッドアイデアにマユイは、今度は感心して目を丸くした。
池の奥から草を踏む柔らかい足音が聞こえてきたら、霧の向こうからあだら先生が現れた。胸に、羽の生えた白い猫を抱いている。
「こんにちは。マユイちゃんに、レイメルさん」と挨拶する、あだら先生の口は少し微笑んでいる。
「もしかしてトカゲやヤモリって、魔法で大きくしたら竜になりますか?」とマユイは、聴いてみた。
「竜っぽく、はできそうだけど本物の竜みたいに個別の特性がないからその分、使い魔としての役割が乏しいかな。それだったら、わざわざ竜にせず彼らの小さな身体を活かして使役した方が良いと僕は、思いますね」
「私が、ヤモリを大きくして竜にしてみたいと思ったんです。あんまり意味はないってことですか?」
「ただのヤモリは、飛べないし火も吹けないし。しかしヤモリは、体が小さくて小回りが利くから人が入り込めない狭いところに入って調査してもらったり鍵穴を開ける手伝いをしてもらったりが、一般的な使われ方かな」
マユイは、ノートに熱心にメモをとっている。メイアもメモをとっていたが、メモをとりながら気づいた事があった。
「魔法生物でない、通常のヤモリなどは、そもそも使い魔に適するのでしょうか?」
「まぁ、問題はないよ。使い魔と意志疎通できるようにする薬を、僕の授業で作ります。意志疎通できるようになれば、魔法生物でないものでも充分に魔女の役に立ってくれます」
あだら先生がしゃがむと、羽を持つ白猫は先生の腕を離れ池の近くの岩の上に座った。毛繕いをし始めたと思ったら、そのうち丸まった姿勢になり寝始めた。
「かわいい。私も、羽根持ちの猫が良いな」とマユイ。
あだら先生は「この子の名前は、グラタン。羽持ちの猫は大抵、木の上に居るからね。探すのも捕まえるのも、けっこう大変ですよ。では」と言い残して、池から出ていってしまった。グラタンも、あだら先生が出ていくのに気付いて後を追うように飛んでいってしまった。
紆余曲折ありながら、マユイは羽根つきの黒猫。おそらく、グラタンと同じ品種の猫である。レイメルは、運良く竜を見つけたがとても小さな竜だった。チョコレートの匂いがする火を吹く竜である。
「ヤモリかと思っちゃった。急に、火なんか吹くから火傷しちゃったわ」とレイメルは、戸惑っている。
「チョコレートの匂いがする竜なんて、レイメルちゃんにぴったりだね。色も綺麗な赤色だし」
「魔法で竜に変えられた、ただのチョコレートでしたとかじゃないと良いな」
そんな話を二人がしている頃に、メイアも蝙蝠を見つけた。少し、珍しい灰色の蝙蝠だった。青が入ったような光沢のある灰色で、美しい色だった。
シダは、早くも見つけたあの黒猫だがシダにとても懐いていて使い魔というより、本当に飼い猫という感じである。
だいたいの生徒が、使い魔を見つけた頃にロウル先生が野外の校内放送用のマイクを使って1年生を召集した。
「1年生の皆さん、使い魔が見つかった見つからないに関わらず今朝、集合した森の入口に戻ってきて下さい。15分後までに、です」
とまたロウル先生が、大きな声で話すので放送された声が割れ、キーンとつらい音が鳴る。
その音で、森の烏や小鳥が驚いてしまい一斉に木々の枝から空に羽ばたいていってしまった。鳥たちの鳴き声と、激しく羽ばたく音が森中に響いた。
【続く】
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