1人が本棚に入れています
本棚に追加
/9ページ
いつもの風景
「おはようございます」
いつものように更衣室のロッカーに荷物を入れて、作業場に入るとすでに見慣れた顔ぶれがいた。
「おはよ」
「おっはよ~」
短く愛嬌のある挨拶で私を迎えたのは先輩社員の大原さん。アラフォーのベテラン姉さん。
手をひらひらさせて語尾を伸ばす挨拶は倉田主任。大原さんにはいつも勝てない。
私は自分専用の椅子に腰かけて、自販機で買ったホットのブラックコーヒーを一口含んだ。
「好きだねぇブラックコーヒー」
倉田主任が椅子の背もたれを前にして肘をつきながら私に言った。
「主任は子供舌だから飲めませんね」
「藍川さんまでそういうこと言う~」
倉田主任は拗ねたように口を尖らせる。倉田主任は上司だが会社で数少ない、軽口を叩ける存在。
「コーヒーはほどほどがいいけど倉ちゃんへの軽口はどんどん叩きなね」
マッサージクッションを肩にあてながら大原さんは言った。
このベテラン姉さんはいわゆる美魔女だ。どう考えても、どう見てもアラフォーには見えない。
少なくなったコーヒーを飲み干しながらそんな風に考えていた。
朝のミーティングを終え、各々が作業に入る。それぞれ立ち仕事の梱包をする者や椅子に腰かけ雑談を交えながら作業をする者。
時にお茶やコーヒーを飲んで。
そんなゆるい職場だ。居心地は悪くない。
続くかどうかは自分の忍耐力しだいだ。
最初のコメントを投稿しよう!