願い事

3/5
前へ
/16ページ
次へ
 それを機に、延長保育を週2回減らした。  本当はもっと減らしてあげたいが、今出来るのは、それが限度だった。  遥人はその週2回の早いお迎えを、とっても楽しみにしてくれた。  迎えに行くと、照れ笑いをしながら、お友達を紹介してくれた。  お友達のお母さんが笑顔で頭を下げた。 「いつも仲良くしてくれて、ありがとうございます」 「いえいえっ!こちらこそ、ありがとうございます」  いつものお迎えの時間は、他のお母さん達と接する事があまりなかったので、なんだか嬉しかった。  遥人と手を繋ぎ、歩きだすと、遥人は手を離し門へと走り出した。  入口の花壇に、園長先生が水を撒いている所だった。  私は小走りで遥人の後を追いかけた。 「遥人、危ないから走らないよっ!」  遥人は花壇の前で立ち止まると、小さな手を広げ、空を仰いだ。 「お母さん、虹だよ」  ふと目をやると、花壇あたりから、虹が見えた。目を凝らさないと見失う程の、うっすらとした小さなものだった。 「ふもとどこかなぁ、ここかなぁ?」  ふわふわと左右に頭を傾ける黄色い帽子の後ろ姿が、たんぽぽみたいで愛らしかった。
/16ページ

最初のコメントを投稿しよう!

6人が本棚に入れています
本棚に追加