現実と温度差

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 しばらく歩くと、パトカーが見えた。さっき聞こえたクラクションはやはり、大きな事故だったのだろうか。  パトカーは赤色灯を灯すだけで、サイレンは鳴っていなかった。どんどん近づき通りすぎると思ったが、私の横で速度を緩めた。  私はそのまま歩いた。まさか、私に御用だなんて思ってもいなかったから振り向きもしなかった。  私に速度を合わせたパトカーの窓が開いた。 「お姉さん、お姉さん、どうしたの?ちょっと話し聞こうかな」  その "まさか" だった。  警察官は二人乗っていた。助手席側の優しそうなおじいちゃん警察官がゆっくり諭すように、もう一度同じ事を聞いてきた。 「どうしたの?ちょっと話しましょう。寒いでしょ?お姉さん、今おいくつなの?」  ナンパのようなフレーズだが、シュチュエーションが違えばこうも心が動揺する物か……。  私の声は震えていたと思う。 「……18です」  二人の警察官は目を合わせた。 「……そう、まっと若いかと思ってね。にしても、この時間はもう危ないからね。お家は?」 「はい……。あります。大丈夫です」 「送りますよ。乗って下さい」  確かに家はある。ただ、家がある事と帰れる事はイコールではなかった。  だからこうやって何時間も歩いているのだから。
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