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どうにか断わろうと、適切な言葉を探している。
「あの……家、すごく近いので」
そう口に出した時、息子が再び大きな声で泣き出してしまった。
私の小さな声は届かなかったのか、聞こえたけども聞き流したのか、もう一度警察官は言った。
「乗ってください。赤ちゃん風邪ひくよ。ね、早く」
口調は優しかった。
それでも乗りたくなかったが、このままでいる訳にもいかず、軽く会釈をし、後部座席に乗り込んだ。
車内は無線のような音がジーッジーッと聴こえてくる。そして暖かい。
運転席の警察官は30代くらいに見えた。振り返り少し微笑んだ。とても誠実そうな人だった。
「赤ちゃんは何ヶ月ですか?」
「えっと……今月で8ヶ月になりました」
「夜泣きが大変な時期ですよね。うちの子もそれくらいの時期は大変だったのを思い出すなぁ……。でも、あと少しですよ」
私からしたらこの人は警察官でしかなかったが、どうやらお家ではお父さんのようだ。
「そうなんですか?でも、あと少しって明日じゃないですよね。永遠に終わらないんじゃないかって思うんです」
冗談でも大袈裟でもなく、本当にそう思った。
永遠にこうやって連れ出さなければいけないんじゃないか、終わりなんて一欠片も見えないと。
でも、誰かに言うのは初めてだった。
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