現実と温度差

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 私の言葉に、おじいちゃん警察官は、はははっと少し笑った。そして運転席の警察官は、言葉を探しているように見えた。少し間が空きこう答えた。 「……明日かもしれないし、まだ少しだけ先かもしれないけれど、終わりは必ず来ますよ。その時には今が懐かしいなぁ、なんて思って少し寂しいものなんですよ」  軽くはにかみ、頷いた。  けれど、現実味はなかった。その時が来たら寂しいだなんて、私は多分思わないと思う。来るなら早く来て欲しい。それしか考えられないのだ。  しかし、そんなあまりにも子育てが辛いんです。と言うような空気を出してはいけないと思っていた。だから、何も答えずただ作り笑顔を浮かべた。  息子は暖かくなったのか、泣きつかれたのか、もう少しで眠りにつきそうな顔をしていた。  おんぶ紐の紐を緩め、前に抱き抱えた。少しお尻をポンポンとすると、ようやく眠った。  おじいちゃん警察官が家の場所と名前を聞いてきた。答えるか迷ったが、記録として必要だからすまないねぇ……と申し訳なさそうに微笑んだ。  私の方が申し訳ないのに、そんな顔をされては答えるしかなかった。 「山下葵です。子供は遥人(ハルト)と言います。家はこの坂を下がって直ぐ見える、白いアパートです。よろしくお願いします」  おじいちゃん警察官は目を細め、車内の薄暗いライトの下で、記録帳を書いている。 「えっと、葵さんね。18歳っと……。ご主人さんは?お家に居るのかな?」 「はい、居ます。仕事が朝早いので、もう寝ていますけど」 「……そうかい、旦那さんは外出てるの知っているのかな?」  知っている。むしろ、眠れないから外に行ってくれと言われ、外で寝かしつけるようになったのだから。  しかし、それをそのまま答える事は良くないのかもしれない、事が大きくなるのは面倒に感じた。 「……どうですかね?知らない間に出ているので、分からないです」
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