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現実と温度差
とても寒い日だった。
頬の感覚は既に麻痺している。そんな夜だった。
空は何処までも高くて、星は沢山あった。
こんなに沢山の星があるのだから、他の星にも 人間みたいな生物は存在しているのだろうと思った。
その存在している星に、母親という役割を今現在している生命体はどれくらいいるのだろう?と考えた。
そして、自分は何番目に出来が悪いのだろうと考えた。絶対なんて信用していない私だが、10位以内に入る自信がある。なんて思いながらただただ白い息を吐き出しとぼとぼと歩く。
背中は暖かい。首元は赤ん坊の泣く息で湿っていた。こんなはずでは無かった。
産めばお母さんになると思っていた。なんだかんだなるもんだと謎に思っていたんだと思う。
けれど……どうだろうか。今の私は途方に暮れていた。
夜な夜な泣き出す赤ん坊に為す術なく、うるさくしても大丈夫な場所へと連れ出す事しか浮かばなかった。
しかし、そんな場所などないと知る。
ひたすら一部の場所で響き渡る事を避けるように歩くしかなかった。
もう、深夜1時を回っていた。人通りなんてない。だからこそよく響く。
私は必死だった。時限爆弾を抱えているような気持ちで、暗い夜道を歩いた。
ここで爆発してはいけない、ここも危ない、ビクビクとしながら歩き続けた。
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