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「委員長には……そういう友達はいないの?」 「っていうか、SNSをやってる友達がいないかな。あはは、質問の答えになってないか」  別に繋がらなくてもいい友人と繋がってしまう現実。お互いにいいねをして、フォローをし合う上辺だけの付き合い。  確かに本当に仲が良い人は、SNSがなくても繋がっている気がする。 「ほら、私たちみたいな人って生活はキラキラしてないから、わざわざ写真に撮ってまで人様に見せるようなことってないんだよね」 「……そんなことないよ。私だってキラキラなんてしてないし……そう見せているだけだと思う」  あぁ、そうだ。見せかけだけのキラキラ。自分の生活が充実しているという謎のアピール。 「私なんてバイト三昧だし。キラキラとは無縁だよ」 「委員長ってなんでそんなにバイトしてるの?」  春香がそう尋ねると、椿は頭を掻きながらニカッと笑った。 「実は歴史が好きで、特に世界遺産は検定で一級を持ってるくらい大好きなんだ。だから写真や映像だけじゃなくて、自分の目に焼き付けたくて海外旅行に行く費用を貯めているの」 「世界遺産……? 検定なんかあるの?」  それから意気揚々と話を進める椿を、春香はどこか羨ましそうに見つめた。  むしろ委員長の方が、目標を持って充実した生活を送っているように思える。私みたいに上辺だけ繕っているのとは違って、心の底から今を楽しんでいるように見えた。  好きなことーー私の好きなことってなんだろう? こんなに熱く語れる何かがあるだろうか。  その時に手の中のメイク道具が目に入る。様々な会社の道具を何度も試し、それぞれの会社の道具の違いや使い勝手も頭に入っていた。  メイクをしている時は楽しいだけじゃなくて、同時に探究心も生まれ、想像以上の仕上がりになると気持ちが昂った。  でもそれは自分だけのことで、わざわざ人に言う気にはならない。聞かれたら答えるけど、自慢っぽく聞こえたら嫌だった。  もしかしたら私の好きなことってメイクだったのかなーーそう実感すると、メイクについてもっとちゃんと知りたいという衝動に駆られ始めた。
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