紗菜ちゃんの中の人と落とし物

7/40
前へ
/116ページ
次へ
 ◆ ◆ ◆ 「なんだ、来たのか」  次の日の放課後、私が佐々木くんのお家を訪ねると彼の第一声はこれだった。  寝癖のついた髪に大きなあくび、まるで今起きたみたいだ。 「蒼空、女の子にはちゃんと優しくするのよ?」  そう言って、またアキさんはお店の準備でどこかに行ってしまい、佐々木くんと二人きりになる。 「来たよ、紗菜ちゃんを助けたいから」  私はリビングの入口に立つ佐々木くんをジッと見つめた。  本当は昨日、佐々木くんにムカつくことを言われて、ここに来るのはやめよう、って考えた。  でも、紗菜ちゃんを助けたい気持ちのほうが大きくて、佐々木くんの力が必要だと思った。  だから、私は今日ここに来たんだ。 「まあ、それもいい」  表情を変えることなく、どうでもいいというふうに佐々木くんが言う。 「さて、じゃあ行くか」 「え? 行くって、どこに?」  急に玄関に向かって歩き出した佐々木くんに、私は声をかけた。  まだ来たばかりで準備が出来てなくて、私は自分のお気に入りの水色のランドセルを背負えてない。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

91人が本棚に入れています
本棚に追加