紗菜ちゃんの中の人と落とし物

9/40
前へ
/116ページ
次へ
 佐々木くんに合わせるように私ももう少し歩くスピードを上げて、彼の隣に並んだ。 「人の多いところに行くのか、面倒くさいな」  せっかく私が調べたことを報告したのに、佐々木くんは全然いい反応をくれなかった。 「その、あからさまに嫌そうな顔するのやめてくれない?」 「僕は間違ったことは言ってない。生きた人間のほうが幽霊よりもよっぽど面倒だ。大勢居るところなんてなおさら……。僕の性格が嫌なら帰ればいいけど、たぶん、君はそうしない」  佐々木くんは私と同じ歳なのに、ちょっと大人みたいな言い方をする。  それに彼の言う通り、私は帰らない。彼の力が必要だから。  佐々木くんが私に冷たくするのは、私に利用されてると思ってるからなのかな? 「でも、一緒に来てくれるんだよね?」  彼はさっき「面倒くさい」と言っただけだ。  だから、面倒だけど来てくれる、っていうこともあるはず。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加