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「落とし物を届けにきました。内側に0823、AAって彫ってある指輪です」
インターホンのカメラに指輪を近付ける佐々木くん。
すると、向こう側でガタガタという音が聞こえた。
マイクを切らずに男の人が動いたみたい。
そのまま玄関の扉を開けて男の人は外に出てきた。
「どうして、それを? 誰かに聞いてきたの?」
驚いた様子の男性は、やっぱりまだ若かった。お兄さんって感じ。
短い黒髪を綺麗に整えてて、仕事から帰ってきたばかりなのか紺色のスーツを着ている。
「幽霊の女の人です。僕には見える」
佐々木くんが男の人に正直に幽霊のことを言ったから、私は少しびっくりしてしまった。
「本当のこと言っちゃうの?」
「言ったほうが早い」
私が後ろから小声で佐々木くんに話しかけると、そんな言葉が返ってきた。
「明日香……」
女の人の名前なのかな? 佐々木くんの幽霊が見えるって言葉を信じてくれたのかわからないけど、男の人がぼそりとこぼしながら佐々木くんから指輪を受け取る。
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