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佐々木くんは相変わらず面倒そうな雰囲気を出している。
「そう、佐々木くんが紗菜ちゃんのこと――」
「僕はなにもしてない。ただの付き添い。用が済んだなら帰る」
「え、佐々木くん!?」
佐々木くんが紗菜ちゃんのこと助けてくれたんだよ、って言いたかったのに、私の言葉を遮って佐々木くんは病室から出ていってしまった。
「ごめんね、紗菜ちゃん、また学校で。待ってるからね?」
佐々木くんを呼び止めたかったけど、先に紗菜ちゃんに挨拶をしなきゃって早口になる。
「う、うん、ありがと!」
紗菜ちゃんはまた元気よく笑顔で手を振ってくれた。
私も笑顔で手を振り返す。
でも、足はもう病室の外に向いていた。
佐々木くんにまだ「ありがとう」って、言ってない。
私は彼のあとを急いで追った。
「佐々木くん、待って。なんで、いつも先に行っちゃうの?」
早歩きで歩く佐々木くんは、私が追いついたときにはもう病院の外に出ていた。
本当に早すぎ。
「用事が終わったから」
真っ直ぐ前を見つめて歩きながら佐々木くんがぼそりと言う。
「まだ終わってないよ」
私の用事が終わってない。
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