紗菜ちゃんの中の人と落とし物

36/40
前へ
/116ページ
次へ
「ああ」 「なんで? 学校には幽霊がいっぱい居るから?」  どうして、話を続けて、彼をここに引きとめてしまうんだろう。  これじゃあ、佐々木くんも帰れない。  必然的に彼の足が止まり、こちらを見た。 「いいや、やらなければいけないことがある」  変わらない気だるげな表情で佐々木くんが答える。 「そっか……」  話、終わっちゃった……。  この先はたぶん聞いても教えてくれない。  学校に来ないなら、ここで佐々木くんとはお別れなのかなって、二日しか一緒に居なかかったけど、ちょっとさみしいなとも思う。  ううん、なに言ってるんだろ、私。  佐々木くんなんて、クールで、へんに大人みたいだし、しゃべりづらいだけじゃん。  でも、会えなくなるのがさみしいっていうのが、彼を呼び止めた理由だったとしたら……。  じゃあ、またね、って言っちゃダメなのかな? 「あの人が」  頭の中で悩んでたのに、佐々木くんのほうが口を開いた。 「え?」  思わず、私の口からちょっとまぬけな声がもれる。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!

92人が本棚に入れています
本棚に追加