紗菜ちゃんの中の人と落とし物

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「あの女の人が君に取り憑かなかったのは、ハチが君を守ってるからだ」  そう言いながら、佐々木くんは私のほうに歩いてきて、足下にしゃがんで、なにかを撫でる仕草をした。  たぶん、ハチだ。  見えないけど、ハチがここに居る。 「そう、なの? ハチ、ありがとう」  目には見えないハチを撫でる佐々木くんを見ながら、ハチに会いたいなぁ……、と思う。  仕方ない、今はハチに似てる佐々木くんで我慢するか、なんて思ったのに、もう佐々木くんともお別れなんだ。 「幽霊が見えるって、羨ましいなぁ」  気が付いたら、無意識にそう呟いていた。  たぶん、これは私の本当の気持ち。 「羨ましいなんて言われたことない。いつも気味悪がられるだけだ」  佐々木くんは一瞬驚いたような顔をして、それから、「へんなの」と言いたそうに、ふっと笑った。  また、佐々木くんが笑った……!  いつも不機嫌そうな顔してるからちょっと怖いなって感じるけど、笑った佐々木くんは少しかっこいい。  さわやかで、優しそうで。 「ダメ元でやってみるか……」  私が頭の中で佐々木くんのことを考えていると、突然、佐々木くんがそう言いながら、こちらに右手を差し出してきた。
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